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初恋をつらぬくということ

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「……そろそろ、行こうか」
話が終わり、少し間があって、桂が言った。
「ああ」
銀時は同意した。
拒否する理由が思いあたらなかった。
桂が立ちあがり、土間のほうへと向かう。
やや遅れて銀時もそうした。
いつものように怠惰な表情を浮かべて歩く。
なにも考えていない様子だが、内心は違う。
もうしばらくここで話をしていたかった。
そんな名残惜しさのようなものを、胸に感じていた。
特に話をしなければらないことはない。そんなものがあればとっくに話している。
ただ、もうしばらく内容はなんでもいいから話を、いや、話がなくてもかまわないから、もうしばらくふたりでいたかった。
バカバカしい。
胸の中にある妙な気分を、自分で打ち消す。
銀時は桂に続いて土間におり、脱ぎ捨ててあった草履の鼻緒に裸足の指を引っかけた。
本殿とは逆の方向に進む。
参道があり、その先には鳥居がある。
境内には木々が生い茂り、枝を大きく伸ばしている。その活き活きとした緑の葉は、青空から降りそそぐ陽ざしを照り返している。
「暑いな」
思わず、つぶやいた。
きものの下で肌から汗がふきだしているのを感じる。
「ああ、そうだな」
隣を歩く桂が返事した。
そのほうをちらりと見る。
暑さのせいで少し紅潮しているが、その肌は白い。
真夏になってもその肌がほとんど日焼けしないことを、幼いころからのつき合いで、銀時は知っている。
すでに肌が小麦色に焼かれている自分とは違う。
鳥居をくぐり、石段をおり、道に出た。
「みんな、もう来ているだろうか」
「まァ、何人かは来てるんじゃねーか」
そんなやりとりをしつつ、道を歩く。左右には田畑が広がるのどかな道だ。田は梅雨の水を使って水田となり、まだ細くて丈の短い黄緑色の稲が植えられている。
桂にとっては吉田松陽の主宰する村塾に行く道だが、銀時にとっては帰り道である。
村塾は松陽の住まいでもあり、その家に銀時は居候している。
松陽とは血のつながりはまったくない。
争い事のあと、遺体の転がっている場所に、幼い自分がいて、そこに松陽がやってくるまで、完全に赤の他人だった。
どんな酔狂でか自分は松陽に拾われ、その家に住まわせてもらうことになった。
それまでは、争い事のあと、遺体から金品を漁って生きていた。
江戸の空に宇宙船がいくつもあらわれ、その宇宙船から地球外生命である天人が大砲を江戸城に撃ちこんで、鎖国していたこの国を強引に開国させて以来、世情は不安定になった。
特に幕府や藩の力があまり届かないところでは、争い事がよく起きる。
幼いころの自分はそんな血なまぐさい場所を渡り歩いていた。
そのうちに、この村の近くに流れ着いたのだった。
生まれ故郷はある。
そこで生みの親と暮らしていたが、ほとんど捨てられるような形でそこを離れた。
理由は自分の外見だ。
こんな生まれつき銀色の髪の者は、まわりを見渡しても、自分しかいない。
だから、鬼の子だと言われ、天人が来襲してからは天人の子だと言われるようになった。
自分は異端であり、だれからも避けられていた。
あのころのことは思い出したくない。
しかし、そんな自分をなぜか松陽は拾ったのである。
よりにもよって、あんな場所で。
松陽は変わっているのだ。
そういえば。
ふと、思い出した。
松陽から拾われたばかりのころ、やはり、ここでも、まわりの者たちから避けられていた。
避けなかったのは、松陽と、そして、桂だけである。
桂は他の者と接するのと同じように声をかけてきた。
他人にはなにも期待しないと決めていた銀時が素っ気なくしていたのにもかかわらず、それでも話しかけてきた。
やがて友人と呼べる存在になり、年月が過ぎてから、あのころのことが話題に出たことがあった。
あのころの銀時は警戒した野良猫のようにかわいくて、ついかまいたくなった。
そう桂はあっさり告げた。
あまりにも予想外な言葉に、銀時はぼうぜんとした。
変なヤツだ。
そう思った。
今でも、そう思っている。
バカにしているわけではない。
それどころか、胸が妙に温かくなる。
桂に近づきたくなる。近づいて、触れたくなる。
なぜだか、わからないが。
作品名:初恋をつらぬくということ 作家名:hujio