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初恋をつらぬくということ

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気持ちが高ぶったまま進んでいく。
やがて、部屋に入った。
襖を閉める。
部屋は灯りがともっていないので、暗い。
桂は畳に立ちつくす。
まだ身体の中では感情がうねり、気分が高揚していた。
けれども、それも次第に落ち着いてくる。
少しして、崩れ落ちるように、畳に座りこんだ。
血はつながっていないとはいえ、父に、口答えをしてしまった。
ようやく興奮がさめ、理性を取りもどした頭に、先ほどのやりとりが鮮明に浮かんでくる。
どうして、あんな物の言い方をしてしまったのか。
自分の言ったことが間違いだったとは思わない。
しかし、どうして、穏やかに、丁寧に、話すことができなかったのか。
そのうえ、自分は苛立ちをぶつけるように席をたち、呼び止める声を無視して、去った。
失礼きわまりない。
思い出したことが胸に重くのしかかってくる。
後悔した。
それは、自分の態度が目上の者に対して失敬すぎたということだけではない。
養ってもらってきた相手に、生活をともにしてきた相手に、あんな態度を取るべきではなかった、いや、あんな態度を取りたくはなかった。
これまで過ごした日々の中で、養父と自分のあいだには、なにか温かなものが築きあげられてきたように感じる。
その温かなものに、自分は、殴りかかるようなことをしてしまったのだ。
殴って、壊してしまったのではないか。
もしかすると養父を傷つけてしまったかもしれない。
不安になる。
悲しくなる。
どうして、あんなことを。
そう思うが、今さらだ。
時はもどらず、してしまったことを取り消すことはできないのだから。
桂は暗い部屋の中で、しばらく、動けずにいた。

日が暮れるのが、ずいぶん遅くなった。
しかし、外にはようやく夜の帳が落ちた。
部屋には灯りがともされている。
松陽と塾生たちが畳に座り、兵学書の解釈について討論している。
その塾生の中には、桂もいる。
銀時はその横顔をちらりと見る。
真面目な表情だ。
勉強中であるのだから、あたりまえだろう。
だが、どこか沈んでいるように感じる。
塾にやってきたときからそうだった。
気になる。
作品名:初恋をつらぬくということ 作家名:hujio