二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

報復

INDEX|12ページ/38ページ|

次のページ前のページ
 

 マクベリーはようやく納得し、指示を実行に移すべく支局長のもとを辞去した。



 その頃アメリカでは、イワン・ゴールキンがイギリス行きの準備をしていた。彼はアメリカ政府向けに対中国政策プランを提案しようと資料を作成していたが、関係者は誰もが間近に迫った大統領選挙に奔走していたし、実際のところ新大統領が確定するまで、そのプランを煮詰めることもできなかった。そんな折り、SISがデヴィッド・メイヤーを通じてゴールキンの協力を依頼してきた。イギリスでもそろそろ中国研究を本格化させたいと考えているので、彼の持つ情報や分析力に頼りたいというのである。
 メイヤーは、このSISからの依頼を知らせるついでに、パリ支局からの報告をゴールキンに伝えた。ザイコフが誘いに応じたというニュースに、彼は満足そうだった。
「だけど、今のところはまだ彼の中身を検証している段階だよ。誘いに応じたフリをして、逆情報を流す魂胆かも知れないからね」
 メイヤーはそう言って釘を刺したが、ゴールキンは楽観的だった。
「彼はたぶん本物だよ。まあ、CIAとしては、真偽を検証しないわけにもいかないんだろうが、彼にはもはやKGBに仕える理由なんか、ひとつもないんだからね。両親もすでに亡いし、他にはこれといって近親者もいない。ひとりだけハバロフスクに父方の従兄がいるらしいが、距離が遠すぎてほとんど交流はなかったというし、離婚したなら妻の方の家族にも気遣いはない。後ろ髪を引くものは、何ひとつないじゃないか。私は本気だと思うね」
「なんだか嬉しそうだね」
「もちろんだ。私は人の能力を見る目は持ってる。彼は本当に使える男でね。前から私の右腕にしたいと思っていたんだ」
「あんたは気が早いな」
 メイヤーは笑った。
「パリ支局がどう判断するか分からないが、彼が本物だったとしても、当面は現地でエージェントとして動いてもらわなきゃいけない。あんたに右腕がつくのは、まだ数年先だよ」
「分かってるさ」
 ゴールキンは真面目な顔で答えた。
「でも数年先には、中国はますます無視できない国になる。私も忙しくなるだろう。その頃までに、私に有能な右腕がついてくれれば御の字だ」
「じゃあ、今後もパリからの彼についての報告は、こまめにあんたに知らせよう。当面は片腕で悪いが、とりあえずこのSISの要請は受けてやってくれるかい?」
「ああ。それくらいは右腕どころか左腕がなくたって朝飯前だ」
 そう言ってゴールキンはイギリスへの協力を承諾し、数日後、メイヤーとともにロンドンへ発った。
作品名:報復 作家名:Angie