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We have been friends since...

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 プロローグ2:サーシャの回想

 母はおっとりした穏やかな人だったが、ひとり息子の躾には厳しかった。私は物心ついた頃から、目上の者に対する言葉遣いや礼儀作法を教え込まれ、周囲の大人たちからは「お行儀の良い子」と言われるようになった。今になってみれば、きちんとした作法を一通り身につけておいて良かったとも思うが、当時の私はそんな風に言われるのが居心地悪く、むず痒かった。いくら大人には評判が良くても、同じぐらいの年齢の子供たちには時として不評だったからだ。悪戯や悪ふざけに乗らないでいると、よく「つまんないやつ」と言われたりした。
 学校に入ると、私は周囲から「優等生」と呼ばれるようになった。本を読んだり新しいことを勉強したりするのは嫌いではなかったので学業成績はよかったが、それよりもむしろ「お行儀のよさ」を買われていたように思う。学業以外のことまで色々と期待され、任されるようになるにつれて、私は自分が周りにとって「都合よく使える」生徒に過ぎないのではないかと思うようになった。
 人の手助けをすることが嫌なのではない。自分が誰かの役に立てた時は、嬉しいとも思う。でも、それを当前のこととして期待され、一方的にアテにされると、なにか腑に落ちずに虚しくなる。そして、そういう期待に応えて「優等生」と呼ばれるたびに、私は自信を失っていった。
 その言葉は私にとって「つまんないやつ」あるいは「便利なやつ」と同義だった。

 そんな私にとって、クラスメイトのひとりだったミーシャ・クラヴィツキーは憧れの対象だった。彼には独自のスタイルというものがあるように見えた。私のいた学校には「親の七光り」に頼る生徒が多かったが、そんな中でミーシャは誰に媚びることも流されることもなく、孤高の鷹のように超然としていた。私は彼と友達になりたかったが、どう近づけばよいのかが分からなかった。というのも、ミーシャは誰からも一定の距離を置いていたが、とりわけ私を避けているように思えたからだ。
 思い切って話しかけてみたことも一度ならずあったが、ミーシャはいつも必要最小限の返事しかよこさず、会話を続けるきっかけを与えてくれない。なにかの拍子に目が合って笑いかけても、彼は不機嫌そうに目を逸らしてしまう。彼には私の何かが気に入らないのだ。あるいは、私のような「つまんないやつ」は相手にしないのだ。…そう思っていた。
 けれどもまさか、ミーシャ本人から面と向かって「優等生」と呼ばれようとは思っていなかった。あの日ミーシャは、明らかに蔑みのこもった調子で、私にその言葉を投げつけたのだ。悔しさと情けなさに全身の血が逆流する思いだった。
作品名:We have been friends since... 作家名:Angie