黄金の秋 - Final Episode 1 -
思いがけない申し出に、ジーナは一瞬目を丸くし、それから光がにじむような笑顔を見せた。胸の前で軽く握った左手を右手で包み込むような仕草は、本当に嬉しい時のジーナのクセだ。
「願ってもなかったことだわ。ええ……ええ、ぜひ!」
少女のようなしぐさで嬉しそうに頷くジーナに、青年はようやくはにかんだような笑顔を見せ、「では、また後日」と言い残すと、サーシャの方にも軽く会釈して去っていった。青年の後ろ姿を見送りながら、サーシャはジーナが小声でつぶやくのを聞いた。
「良かったこと…。本当に良かったこと。ねえ、ミーシャ……」
2日後に行われたミーシャのパミーンキは、まるでお祭りのようだった。同じアパートの住人たちはもちろん、近所の年寄り連中や行きつけの店の主人夫婦、かつての部下たち、さらにはボクシングジムでミーシャの指導を受けていた子供たちまで、まさに老いも若きも男も女もわんさと押しかけ、大変な騒ぎになった。サーシャは改めて、ミーシャを慕う人々の数の多さに驚いた。見知った顔も多かったが、それ以上に初めて見る顔が多かった。
人々は口々にミーシャの思い出を語り、数々の個性的なエピソードに笑いあった。涙を流す者も少なくなかったが、少しも湿っぽくはならなかった。実にミーシャらしい、賑やかなパミーンキだった。
パミーンキの翌日、モスクワの町を驟雨が駆け抜け、今年の夏が去っていった。
作品名:黄金の秋 - Final Episode 1 - 作家名:Angie