神殿長ジルヴェスター(15)
ローゼマイン視点
貴族院を卒業して、成人した私(本当なら1年前だけど)は今日、ジルヴェスター様と星を結ぶ。
私達は正式な婚約式をしていないので、星結びは拘って欲しいとお願いした。だって花嫁だもん!!
母さんの染めた布を纏い、トゥーリの編んだ髪飾りを着け、ドレスはコリンナさんを含めた皆の手作りだ。
私は城の挙式場でジルヴェスター様に先に入って待っていて欲しいと伝え、お父様(今日はお祖父様が護衛だ)にエスコートをして貰い、挽いて貰ったレッドカーペットの上を歩いて、挙式場へ向かう。
開かれたドアから少し前に立っているジルヴェスター様に渡され、今度はジルヴェスター様のエスコートで、共に奥へと向かう。
そう…、ヴァージンロードだ!!
神父がいる訳ではなく、指輪交換もないからこそ、雰囲気だけでも似せたかったのだ。
その代わりに婚約式で交わす求婚の言葉を星結びで言ってとお願いしたけど。
「…ひび割れたエーレンフェストのゲドゥルリーヒに、メスティオノーラの叡知と、フェアドレンナの雷と、フリュートレーネの流水を注ぎ入れ、潤し、癒し、そして育て、大いなる変化を美しく齎した、聖女ローゼマインよ。
エアヴァクレーレンの導きにより、幼き其方と出会い、リーベスクヒルフェによって結ばれた絆は、ドレッファングーアの糸紡ぎと、ブルーアンファとエフロレルーメの祝福により、今日の、ラッフェルの実に定まった。
…これより先は、我が闇を照らす光の女神となり、共に歩んで欲しい。」
商人としてバリバリやって来た事を言ってるんだろうとか、神殿での生活についてだろうとかは分かった。神様に例えるのは大袈裟な気もするけど、この世界では良くある話らしいし。
チラリ、と周りを見るとウンウンと頷いているのが見える。…お母様が目頭を押さえてる。何に興奮しているのか。
誓いの言葉の代わりになるだろうから望んだし、私も頑張って考えたんだけど、ヤッパリ貴族言葉は難しいよ…。あ、ブルーアンファ~ラッフェルの実まではリップサービスだって分かったけど。
…さて、私の番だ。
「神に真摯に祈りと感謝を捧げた王の定めに従って、神殿長を勤めたアウブの道を、古より呼び戻した、リーベスクヒルフェの性を持つゲボルトヌーン、ジルヴェスター様。
カーオサイファの猛攻に堪え忍ぶドゥルトゼッツェンが、私に向かう混沌には、風の盾を持つシュツェーリアと変わるのだと知った時より、貴方が私のゲドゥルリーヒとなりました。
…本日より、私は我が闇の神、ジルヴェスター・エーレンフェストを照らす光となります。――共に歩みましょう。」
…頑張ったよ、私、頑張った!! 慣れない神様表現を自分の気持ちに当て嵌める為に、グルトリスハイトをこっそり持ち出してまで頑張ったよ!! 誰か誉めて!!!! …あれ? 何で固まってるの、皆?? 可笑しい処、無かったよね???
作品名:神殿長ジルヴェスター(15) 作家名:rakq72747