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神殿長ジルヴェスター(15)

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カルステッド視点



 婚約式と星結びを一緒に行う本日。本来、星結びの日は今日ではない。だがローゼマインが記憶の無いフェルディナンドの養育をジルヴェスターだけに任せられない、一刻も早く養育権が欲しい、と訴えた為だ。
 …確かにジルヴェスターは甘やかしの天才だからな、ローゼマインが怒るのも分かる。
 通常とは違う星結びだからか、婚約式と一体化した様な形に、拘ったローゼマインの希望が重なった。
 今、最高神の祝福をローゼマインとジルヴェスター自身が掛ける処だ。少し改編した祝詞を共に唱え、祝福を飛ばす。大きな差は無い。どちらの努力の結晶かは解らない。まあそれはともかく。

 「神に真摯に祈りと感謝を捧げた王の定めに従って、神殿長を勤めたアウブの道を、古より呼び戻した、リーベスクヒルフェの性を持つゲボルトヌーン、ジルヴェスター様。」

 確かに思わぬ不幸の重なりも、秩序を戻したと言えば綺麗に纏まるし、ジルヴェスターの性格も熟知している言葉だ。しかしな? 

 「カーオサイファの猛攻に堪え忍ぶドゥルトゼッツェンが、」

 確かにジルヴェスターは只々堪え忍んでいた。ゲオルグ様にもフェルディナンドにも。しかしな? 

 「私に向かう混沌には、風の盾を持つシュツェーリアと変わるのだと知った時より、」

 確かに頭の良い其方が何も気付かぬ様に必死に守っていた。しかしな? 

 「貴方が私のゲドゥルリーヒとなりました。」

 其方の言い分は解る、納得出来る。しかしな? 

 「…本日より、私は我が闇の神、ジルヴェスター・エーレンフェストを照らす光となります。――共に歩みましょう。」

 婚約式の言葉で。男を、夫になる男を。‘女神’に例える。

 ……ローゼマイン、おかしいぞっ!!!! 闇の神の取って付けた感が酷いっ!!!!!!!!

 我が叫びが言葉に出せていたなら、賛同者で場が一杯になったろうが、そんな事を叫ぶ訳には行かず、私は深い深い溜め息を、内心でだけ吐いたのだった……。