神殿長ジルヴェスター(15)
ベンノ視点
グーテンベルクとルネッサンス。ローゼマイン様――、マインの専属を集めた屋敷、あー、ちょっと立派なマンション、だったか? マインの秘密を知る人間の集まりだ。
マインの家族とルッツの家族。それに俺とマルク、コリンナ一家。少し前に領主になったジルヴェスター様と急成長したマインがやって来て、前に小神殿を作った様に、これを創った。因みにマンションって言うのは、マインがその時言っていた言葉だ。
妬みを一心に集めるギルベルタ商会には大なり小なり嫌がらせがあった。前の領主様だったフェルディナンド様がいつの間にか把握していて(怖い)、直ぐに治まったが(怖い)、商売上の便宜を考え、プランタン商会を創った。
それから数年たった今年。ギルベルタ商会は顧客も増え、従業員も増えた。大幅に。増築では足りない程に。そこで新しい職場を作り(マイン方を見習って)、今までの商会の場所は大改築で従業員の住み家にした訳だ。
で、俺達の家をどうするか、って話していた時、マインとジルヴェスター様が来て、あっという間に新しい家が出来た訳だ。
ギュンターさんやルッツの家族はそれぞれの職場にそこから通う事になる。
ある夜の事。住人共同スペースとやらに集まっていた俺達は大切な話があるから、そこで集まっていて欲しいとフランを通じて言われていたからだ。神殿ではなく住居で、と言うのは良く分からなかったが、集まらない理由は無く、何となくそわそわする。…カミルがそんな周囲に首を傾げていた。
カッ!!
部屋の一角が光り、魔方陣と思しき模様が浮かぶ。次の瞬間、見知った姿が現れた。
「ただいま!! マインだよ!!」
美しく艶やかな衣装を身に纏う、中身が残念な美女が。
フェルディナンド様が魔術具の事故で赤ん坊になったと聞かされた時はなんじゃそら、と思っていたのだが、実はその時に契約魔術が切れていたらしい事を今、知った。
ローゼマイン様が姉だと知って呆然としているカミルは抱き締められ、助けを求めているが、そのまま人身御供にして、俺達は一緒に来た(連れて来られた)ジルヴェスター様に詳細を聞いている。
俺達を信用しているジルヴェスター様は契約魔術を行使する気は無いらしく、この家では平民として接する事が許されるしい。
ギュンターさんを筆頭に泣き笑いの顔になるマインの一家。
「マイン~!!!!」
トゥーリがカミルに抱き付いたままのマインに飛び付く。その周りに近付く親2人。ジルヴェスター様は…、ん?
「ジル様、何方に?」
ルッツが声を掛けた事で、ジルヴェスター様が背中を向けた事に、全員が気付いた。
「え、いや、水入らずが良いかと…。」
「ジルヴェスター様!! ちゃんと紹介させて下さいって言ったじゃないですかっ!! コッソリ帰ろうとしないで下さい!!」
「怒るんじゃないよ、マイン。カミルを抱き締めて、旦那を放っとくアンタが悪い。」
ピシャリ、と言ったのはカルラさんだ。
「ふえぇぇっ!! な、何で!!?」
「ふん、アタシのカンを甘く見るんじゃ無いよ。」
「ほう…、やはりジルヴェスター様に決まったのか。…幼女、うっ!!」
最後の方が良く聞こえなかったが…。カルラさんは何でディードさんを小突いたんだ?
「マ、ママ、マ、マインっ!!」
悲壮な顔をしているギュンターさんだが、エーファさんは頬を紅潮させている。
「ほら、マイン。私達に義理の息子を紹介しなさいな。」
「う~、う、うん!! わ、私、今日ね、ジルヴェスター様と星を結んだの!!」
は?
季節外れの星結びの話が始まった。…ま、何にせよ、だ。マイン、おめでとう。口付けくらいはしてやれよ。
その後、何故かジルヴェスター様から恋愛対象としては見られていないと思い込んでいた事が判明したのだが。
「そこからかっ!! そこからなのかっ!!? マイン!!!??」
ジルヴェスター様が泣…、いや、止めておこう。領主の沽券に関わりそうだ。
作品名:神殿長ジルヴェスター(15) 作家名:rakq72747