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章と旌 ( 第一章 第二章)

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「だが、ちゃんと謝れよ。今回は、弁解してはいけない。父上や母上の小言が長くなるだろうが、全部聞くんだ。分かったな。」
平旌は、うんうんと何度も頷いた。
━━私には素直なのだ。平旌は、相手が父上だと、どうしても素直じゃない、、。というか、、もう少し上手くやれるだろうに、、。━━
平旌はすくっと立ち上がると、平章の目の前で、拱手した。
「兄上、よろしくお願い致します。」
「全く、調子が良いな、お前と来たら。」
平章も立ち上がって、平旌の頬を抓ってやる。
「へへへ、、、。」
平旌の目が細くなって笑う平旌。いつもの平旌に戻った。
少し着崩れた平旌の胸元を、直してやる。そそっかしいのか、平旌が自分で衣を着ると、微妙に合わせや肩の線がずれていたり、、、本人は恥ずかしいとは思っていないが、王族の一員として、着衣は整えられているべきだ、そう思っていた。それは平章だけではなく、父庭生の無言の教えなのだ。父庭生もまた、平章の様に、平旌の姿を見かけては、側に呼んで、こうして衣を整えたりするのだ。


今から数日をかけて、連れてきた私軍と一緒に、平旌は王府に戻る。

そして平旌は、父から罰を与えられ、自分の居所で、大人しく読み書きしていると思いきや、様子を見に行くと、部屋はもぬけの殻で、実は荀飛戔の元へ、剣の稽古に抜け出して、屋敷の者を騒がせたりする。
そんな長林王府の日常。
━━騒がしい日々が戻ってくるのだ。━━
平章には、何より嬉しい事だった。
平旌のいない王府は、眩しく王府内を照らし出していた灯火が、消えた様になり、皆、言葉には出さないが、平旌の行方を心配し、ひりつく様な空気で満たされていた。
ひっそりと呼吸をしていなければならない場所に変わってしまった。
━━王府の中、どれ程お前の存在が大きいか、お前は分かっているのか?。
自由を求め、常にお前は、外に心を置こうとする。持って生まれた、お前の本幹なのかも知れないが、私ではお前の変わりは務まらない。
長林王府には、お前が居なくては駄目なのだ。
お前は長林王の子なのだから。━━


東青から馬を用意され、馬に跨った平旌の視線が、兄を追った。。
平章と視線が合った。
━━もう、黙って行くな。━━
心で平章が語り掛ける。平旌が嬉しそうに満面の笑みを返した。
━━、、、、分かってないな。━━
これも、いつもの平旌。
これだけ心配をさせられたのだ、道中、少々、平旌をからかっても、悪くないだろう。
何も知らない屈託のない弟に、少し悪戯をして、からかってやりたくなる。
どの兄でも、そういうものだろうが、、。
━━平旌に何かあれば、私は必ずお前のもとへ行き、何と引き換えにしても、お前を救い出す。
そして平旌もまた、何があろうとどこに居ようと、私を信じ、恐らく心は離れまい。━━
平章自身もそうだった。
二人きりの兄弟、どの兄弟よりも、その絆は強い、そう思っていた。

「平旌、行こう、、、、帰ろう。」
平旌は云と頷く。
長林王府も、平章自身も、幾度か苦難に遭い、その度に乗り越えてきたのだが、今回の件、どれ程辛かったか、、、。
━━ようやく戻れるのだ。日常に。━━
何にも勝る喜びを感じていた。

平章の波打った心が、漸く、落ち着きを取り戻した。




《第二章》


当然と言えば当然、事情を知る、全員が予想出来ていた場面だった。

当の平旌は、長林王府が近付くにつれ、次第に表情がこわばり出した。何だかんだと、用事を作って、王府に帰るのを先延ばしにしようとしていたが、兄平章が平旌を離さず、そして許さなかった。
諦めて王府の門の前まで来たが、そこから、どうしても足が動かなくなり、王府の門を潜(くぐ)れない。
「平旌??。どうした??。」
『ここまで何とか来たのだ、どうしてこの門がくぐれないのだ?』、と、平章には不思議で仕方なかったのだが、潜れないものは潜れない。
「、、うw、、、、。」
「ほら、平旌、いくら父上でも、お前を取って食ったりしない。覚悟を決めたと、自分で言っていたではないか。」
泣きそうに切ない眼で、兄を見る平旌。
こんな目で見られると、少し可哀想にも見えて、『私が、平旌の代わりに謝れば、何とかなるのでは無いか』、兄の心に、そんな気持ちも芽生え出して、、、、。
「、、ぁ、、、イカンイカン。ほら、入るぞ平旌。逃げたってどうにもならない。男子ならここで踏ん張れ。」
「、、兄上、、。」
「、、、なら、平旌、選ばせてやる。自分で入るか?。それとも、私に担がれてはいるか?、どっちが良い?。早く決めないと、通行人から、お前のこんな姿が、金陵中に広められてしまうぞ。」
「、、、う、、自分で入る、、、、。」
「よし、自分で言ったぞ。平旌が選んだのだからな。ほら、入れ。」
「、、、、うん、、、。」
門から中を覗けば、正面には父長林王が普段のいる、居所が見える。
目を閉じて、平旌は覚悟を決める。
「、、よし、、。」
平旌の瞳に力強さのようなものが見えた。『これで大丈夫』兄はそう思ったが、、、、、。
、、、、、、だが、いつまで待っても、平旌は一向に入ろうとしない。
そして、情けない顔で兄を見る。
「、、、、兄上、、。」
「あ────っ、、もう。」
待ちきれず、兄が平旌を担ぎ上げ、王府の門の中に入った。
後ろで見ていた東青が、笑いを噛み殺していた。
「兄上ww、やめてやめてwww。」
じたばたと、担がれたまま平旌が暴れだした。細っこい棒の様な肢体だが、力は強い。
「、、、、っぅッ、、、。」
平章が平旌を下ろした。
「、、ぁ、、痛い??、、ごめん、ごめん兄上、、。」
平章は、怪我をしたという右手の、手首を左手で握り、痛みに耐えていた。平章は、平旌を救出する折、槍が使えなかったのは、そのせいだった。
「、、大丈夫、、、大丈夫だ、、。」
平章は、痛そうな表情から、無理やり笑顔を作るのだ。どう見たって大丈夫では無い。
だいぶ前の怪我だと言うが、腫れと痛みが、なかなか引かないらしい。
しばらくすると、平章の痛みは和らいだ様子だ。
「それにしても、兄上らしくない、、。馬に手を噛まれたなんて、、。馬に何かしたの??、よっぽどヤな事しようとしたの??。」
「まぁ、、そんな所だ。」
「ぼーっと考え事でもしてたんでしょ。」
兄が「ふふ、、」と笑う。
「、、あ、そうか、、私の事、、、。」
そこで初めて、平旌は、「自分の事を心配」していたのだ、と、気がついた。
「、、兄上、、ごめんなさい、、。」
「大丈夫だ、、考え事しながら、馬を扱った私が悪いのだ。気にするな。」
兄が左手で、平旌の頬をなで、平旌の襟を直してやる。
「父上の前でも、その位、素直で居ろよ。お説教の時間が、少し短くなるぞ。」
「、、、、、う"、、。」
平旌に、辛い現実が蘇る。

「──早く入らぬか!。──」
離れた場所から、声がする。聞き覚えのある声だが、今は聞きたくなかった。
王府に響き渡る、父、長林王の声。
決まった様で、全くもって、ぐずぐずと決まらない平旌の覚悟。
平旌の覚悟が決まる前に、辛い現実が現れてしまった。
どこかでどうにか逃げられないかと、ずっと思い願っていた。