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『掌に絆つないで』第四章(前半)

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Act.05 [幽助] 2019年11月6日更新


赤紫色の大地が広がる。
敵を追い込んだ幽助と飛影の隣に、新たに仲間が二人加わった。禍々しい色をした気体の渦に囚われかけていた蔵馬と、彼を助け出した桑原。
どれくらいぶりだろうか、四人が一列に並び共通の敵を見据えるのは。
幽助は武者震いするほどの興奮を覚えていた。


冥界玉で螢子を蘇らせてしまった幽助が次に見たもの、それは桑原を連れてこちらへ向かってくるぼたんの姿だった。
「桑原……!?」
幽助が冥界玉で蘇らせたのは螢子だったはず。彼は自分の目を疑った。しかし、近づいてくる懐かしい姿は、いくら両目をこすっても消えない現実のものなのだ。
「オレは……二人も蘇らせたってのか?」
「違うよ、桑ちゃんは……」
「蔵馬に……、呼ばれ…たんでェ」
全力でぼたんの櫂を追いかけていたらしい桑原は、息を乱しながらそう言った。
「蔵馬に……?」
現状を整理しきれず、幽助は言葉を失う。そんな彼をよそに、螢子とぼたんは向き合うなり抱き合って再会を喜んだ。
「螢子ちゃん……っ」
「ぼたんさんっ」
ひしと抱き合い螢子の肩に顔を埋めながら、「幽助が蘇らせたのは、やっぱり螢子ちゃんだったんだねぇ」とぼたんが呟く。
「螢子はオレで……おめェは蔵馬に?」
幽助は、改めて桑原に向き合った。
「ああ」
力強く相槌をうった桑原。
夢じゃ……ないんだよな。
幽助はまじまじと桑原を眺めた。
目前の桑原は最後に会った日よりもずっと若い、初めて幻海師範のもとへ赴いた頃の姿。その身には彼のトレードマークでもあった長ランをまとい、パーマをあてたリーゼントも健在だった。
冥界玉は、彼らの心の中のイメージをそのまま具現化できるのだということが、説明されずともわかった。
螢子は幽助が一番見慣れていた姿。桑原は、蔵馬が想像したままの姿で、それは自分のイメージとも一致するもの。
桑原だ……。
目頭が熱を帯びる。けれど、幽助が涙の感触を味わうより前に、桑原の腕が彼の首をがっちりと捕らえた。
「おいっ、浦飯。てめェ、ほんとは雪村じゃなくてオレを呼びに来たんだってな?」
「……う…」
「オレ様の次元刀が必要なんだろーがよ。まったく、いっつも肝心なところで抜けてやがんな」
「…っさいわ! そうだ……こうしちゃいられねェんだった!」
幽助たちには細かい状況を確認することはおろか、再会を喜んでいる時間すら与えられてはいなかった。
「桑原が見つかったんだ! こうしてる暇はねぇ、亜空間に戻るぞ、ぼたん!」
「あ、ああ、そうだったね!」
「螢子、お前は………ここで待ってろ」
「……私は、行かなくていいの…?」
本来なら、螢子をコエンマのもとへ連れて行くべきなのだろう。それは幽助にもわかっていた。
「冥界に乗り込んで蔵馬を連れ戻してからでも……、遅くはねェはずだ」
ぼたんに視線をやりながら、幽助が呟く。正直なところ、ぼたんは賛成しかねた。だが、幽助の気持ちは充分すぎるほどわかる。とても反対意見は言えず、見て見ぬ振りをするつもりで黙り込んだ。
「あとで、迎えに来る」
そう螢子に言い残し、幽助はぼたん、桑原とともに亜空間へ向かった。